「えっ!!そうなのか!?」 ルフィは心の底から驚いた、という顔をした。というよりも、ショックを隠しきれない、と言った表情だった。 「いや、お前、星がいきなり消えたり現れたりはフツーしねェだろ」 つい、ゾロが気の毒そうに言ってしまう。 「そういや・・・そうか・・・」 何故ここまで落ち込む必要があるのかはわからないが。ただでさえ、めったに落ち込まないタイプなのに。 ルフィは、天の川は7月7日にしか見えないものと思っていたらしい。幼稚園の時の七夕会で、先生の言うことを、中途半端に聞いていた結果だ。それが15歳にして初めてそれが思い込みであったことを知った。ゾロの言う通り、普通に考えればわかりそうなものなのだが、思い込み、というのは恐ろしいものである。 「じゃぁ、なんで7月7日が天の川の日なんだよ」 確か、笹竹に「天の川」と書いて吊るしてあるのをみたことがある。 「知らねェよ。っつうか、7月7日は七夕だろ。」 「七夕になると、天の川出てくるんじゃねェの?」 「天の川に橋がかかる、とか言うんだろ?」 「橋?」 「なんだか、一人で働かされてた女を天帝が川向こうの奴に嫁がせたら、嫁がされた途端働かなくなったんでまた別居させられて、年に一回だけ川に橋がかかって会える、とかいう話じゃなかったか?」 「うわ。天帝勝手!」 「言われてみりゃそうだな」 「そんな話だったか・・・」 ルフィはさらに落ち込んだ。別にルフィの勘違いは今に始まったことではないのだが、少し様子がおかしい。 「遊んでると別れ離れにされるんだ・・・」 「あー・・・まぁ離婚させられたわけでもねェんだろうけど」 たぶん。ゾロだって、七夕の話なんて、幼稚園の頃に聞いたきりだ。 「やっぱ、毎日一緒にいたいよなぁ・・・」 「そうかもな」 「気のない返事だなー」 ルフィが少し顔をしかめた。 「お前がそれを言うのかと思ってな」 またルフィが傷ついたような顔をした。最近はこんなことばかり言っている気がする。別々の高校に行ったら、今みたいにはとてもしていられないのだ。一年に一回、ということはないのだろうが、ルフィには危機感がまるで足りない。 「じゃぁ、どれが天の川なんだ?」 ルフィが空を見上げる。 「おれが知るかよ」 天体はゾロの苦手分野だ。どれが銀河系の星なのかなどさっぱりわからない。星など皆同じに見える。空には目印がなにもない。 「人に合わせて進路決めるなんて、つまんねェよな」 「あぁ、そうだな」 ルフィの言うことは正しい。 「でも他にやりたいことがなかったら、悪くねェかもな」 ルフィが空を見上げたまま、呟いた。 「とりあえず、頑張れるだけ頑張ってみるから。ゾロも、天の川がどれかぐらいわかるようにしとけ。来年また聞くから」 天の川は年中見れるものだと説明したはずだが、まぁ、よしとしよう。ゾロも空を見上げた。
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