最近ゾロは非常に疲れている。とルフィは思う。 本人は隠している感じだが、帰ってきてからの口数も微妙に少ないし、表情に疲れが見えている。 どうやら仕事がいろいろ大変らしい。どう大変なのかはルフィにはわからないのだけれど。 どのくらい大変なのか、とか、今どんな仕事をしているのか、とか、いろいろと聞きたいことがあるのだが、ルフィもそこを我慢している。ゾロが話してくれるまで、待つことに決めた。 「・・・ものすっごい苦手なんだけどな」 ただ待つというのは相当忍耐を強いられる。けれど、ルフィがあれこれ質問すると、ゾロはきっと答えてはくれるかもしれないが余計疲れてしまうに違いないのだ。 「まぁ、聞いたところでわかるとも思えねェし」 こういうとき、同じ仕事をしていれば、話題も共有できるのかな?とも思うのだけど。 階段を上る音が聞こえた。この足音はゾロである。今日もやっぱり少し疲れ気味だ。ゾロの体力についてはまったく心配していないルフィなので、たぶん、仕事時間よりも、仕事の内容に問題があるんだろうな、と思っている。 「おかえり」 鍵の開く音がして、ドアが開くと同時にルフィが声をかける。 「お疲れさん」 「あぁ、ただいま」 ゾロの雰囲気が少し柔らかくなっていて、ルフィはひょっとしたら、仕事が一段落したのかな、と思う。でも、とりあえずは我慢だ。 食卓について夕飯を食べながら、ゾロが徐に口を開いた。 「とりあえず、一段落ついたから。気を遣わせて悪かったな」 「・・・・・・・・」 ルフィの顔が、嬉しそうになって、それからがっかりしたような複雑な表情を浮かべた。 「・・・なにか失敗したか?」 ゾロの顔も少し困惑気味になる。ルフィが慌てて、 「いや、ゾロが仕事頑張ったのと、心配事がひとつ片付いたのは嬉しいんだけど」 「けど?」 「我慢してたのバレてたのがちょっと悔しい」 ゾロが笑った。 「そりゃわかるだろ。お前が一番苦手なことだ。ただ待つってのは」 ルフィはちょっと面白くない。不満が顔に出ているのか、ゾロは苦笑して、 「拗ねるな。お前が頑張って我慢してくれたから、おれも頑張れた。ありがとう」 ここ数日、押し付けられた慣れない仕事をなんとかこなせたのは、ルフィの支えによるところが大きい、とゾロは思っている。 「そっか。ならいいや」 ルフィはあっさりにぱりと笑った。 「じゃぁ今日は宿題ないのか?」 気を遣うのをやめたルフィの質問にゾロは笑った。このところ、持ち帰って仕事をすることがあったのだ。 「あぁ。当分は、あんな無茶な仕事を回されることねェだろ」 「じゃぁ今日は久しぶりにゆっくりできるな」 ルフィが嬉しそうに笑った。それから兼ねてより気になっていた質問をぶつける。 「仕事って、どれくらい一生懸命やったらいいんだろうな」 ルフィの仕事は半分趣味みたいなものだから、あまり仕事!という意識がない。ゾロは仕事が好きだとは聞いたことがないので、どんな風に考えているのだろうか。 「自分が満足するまでだろ」 あっさり返ってきていささか驚いた。好きじゃなくてもそこに責任がある限り、きちんとこなさなければゾロは満足できない、ということだ。 「なんか、すごい。かっこいい」 少し感動気味のルフィに、ゾロは怪訝そうな顔をして、 「いや、当たり前だろ」 「いや、非常に惚れ直したぞ」 ゾロにはなにがルフィの気に入ったのかよくわからなかったが、まぁよいか、と思う。 「なら、証拠をみせてもらっていいか?」 今日は久しぶりにゆっくりできるのだ。 「おぅ、任せとけ」 大変頼もしい返事だったが、ルフィの顔は非常に赤い。なんにせよ、すぐに顔に出てしまうのが、ルフィ曰く修行不足なところであり、ゾロ曰く可愛いところであった。
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