新中学三年生                        

 


「今年は一緒のクラスだと思うんだよな」
「なんだその自信」
 いつもの通学路を歩きながら、高らかに告げるルフィに、ゾロは胡散臭そうに返す。
「初詣の時、そやってお願いしたから」
「・・・よくそれだけのことでそうも自信満々になれるもんだ」
 あきれたように返したら、ルフィが心外そうに、
「ゾロみたくガーガー寝てた罰当たりにはわかんねェんだよ」
「わからなくて結構だ。」
 初詣など行く人間の気が知れない。というのがゾロの意見だ。するとルフィの顔がちょっと不機嫌そうに顰められて、ゾロは密かに身構えた。
「ゾロはおれとおんなじクラスになりたくねェのかよ」
 こういうことをさらりと言ってしまえる辺り、新中学3年生としてはどうなんだろう。それともおれがおかしいのか?とゾロはちょっとため息を吐いた。
「微妙」
「なんだよそれ」
「これ以上振り回されんのもどうかと思ってな」
「いつおれがゾロ振り回したよ。っつーか、ゾロが誰かに振り回されてるトコなんて想像つかねェし」
 確かに、ゾロはマイペースな方であったし、誰かの都合に振り回されたりするのは大嫌いでもあるのだが。どうにも目の前の幼なじみに対しては例外らしい。ゾロが黙ったので、ルフィはゾロが納得したものと思い、続ける。
「3年生って言ったら、修学旅行があるんだぞ?同じクラスにならなきゃ同じ班になれねェじゃん」
「・・・受験がある、とか言わねェのがルフィだよな」
「同じクラスだったら、宿題とかも同じだし」
「写そうなんて思うなよ」
「時間割り忘れても教えてもらえるし」
「教科書忘れても貸せねェけどな」
「・・・ゾロ、なんか最近ちょっと意地悪くね?」
「・・・こんなもんだろ」
 言いつつも、密かにゾロは動揺してしまった。このところ、ルフィを見ていると少し苛々するのだ。
「でもいなきゃいないで落ちつかねェしな・・・」
「なんか言ったか?」
「なにも」
 言った途端、少し前を歩いていたルフィが走り出した。ゾロはあわてて追いかける。これはもう条件反射だ。ほぼ全力で走り、校門に到着する。
「おれの勝ち〜」
 嬉しそうに言うルフィに
「完全にフライングじゃねェか」
 ゾロは毒づいた。これのどこが振り回してないと?
「早く確かめたくなったんだよ。ゾロと同じクラスになったの」
「初詣ごときで思いどおりになるかよ」
 根気よく言い返し、ゾロはルフィのあとに続いた。そして、貼りだされた一覧表を真剣に見ているルフィを見ていた。どうせ、ゾロの分も確認していることだろう。
「な!」
 いきおいよく振り返ったルフィと目が合う。その満面の笑みに、やっぱり少し苛々する。
「言った通りだろ」
 何故か誇らしげに胸を張るルフィに、彼の予言どおり、同じクラスになったのだと知った。
「やっぱり、初詣は行った方がいいぞ、ゾロ。」
「行かねェよ。来年も。」
「意地か?」
「いや、行かなくてもいい結果が出るってわかったからな。」
 ルフィは少しだけ考えた。
「いい結果?」
 すぐに聞いてしまうのがルフィの欠点だ。
「別におれはお前と同じクラスが嫌だと言った覚えはない」
 ゾロはそれだけ告げた。
「おぉ!よろしくな!」
 にっかりと笑うルフィには少し苛々させられるが、決して悪い気もしないのだ。




     初出 2007.4.25   一応昇級。     
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