遊園地

 

「お前、それ、暑くねェか?」

ゾロが言った。ルフィは暑がりなのだ。それが今日はやたらと厚着をしている。12月といえども、今年は暖冬らしくて、そう、寒さが厳しい、というほどの気候ではないのだが、厚手のハーフコートの下にも多分、いろいろと着込んでいる。その赤いコートはルフィによく似合うし、モコモコしていてかわいくはあるのだけれど。

「平気だ」

実はちょっと暑いかなぁ、と思いながらルフィが答える。

「でもお前ちょっと顔赤いぞ?」

ゾロは少し心配そうだ。具合が悪いのかもしれない、と思ったせいだ。熱でもあったら大変だ。

「平気だって。次あれ乗るぞ!」

ルフィは少し慌てる。指差す場所はループのジェットコースター。スクリューのコースターに乗ったのは今さっきだ。その前はやたらと長いコースター。その前はいわゆる落ちモノ。これだけ絶叫系に乗りたがるということは、体調が悪いわけではないのだろう、とゾロは安心する。ただ、今日はなんでも付き合う気だったが、絶叫系ばかり続けて乗るのはいささか胃に悪い。そもそも遊園地自体、あまり来たことがないのだ。誘ったはいいが、どう考えてもルフィの方が慣れている。それでもまぁ、楽しそうだからいいか、とルフィの後について歩いた。

 だいたい、遊園地のアトラクションなんて、絶叫系か、回転系か、子供用か、それだけで、あまり乗り物に強くないそれなりに年をくった男はどうやって楽しむんだろう、という疑問はどうやら解消されつつある。こんなに楽しそうな顔が見られるなら悪くない。遊園地という選択は間違っていなかったようだ。それでも今日のルフィは少しおかしくて、ゾロとしては気になるところだ。心当たりがあるだけに。さて、どうするか。行列に並びながらゾロは隣のルフィを見る。気になるのはこの微妙な距離である。ルフィは常にゾロから一定の距離をとっている。そして決して目を合わせようとしない。あのルフィがだ。こうして並んでいる時でさえも。原因はゾロにある。無闇に距離を詰めるようなことはしない方がよいとは思う。そうは思うが、なんとなくもどかしい。ゾロはこっそりため息をついた。

 

 一方、ルフィも困っていた。どうにもゾロに近づけないのだ。今までだったらいくらでも腕を取ったり、手をつかんだりできたのに。どうやって、そんな風にしていたのか思い出せなくなっていた。ゾロと一緒にいるのはとても嬉しい。それは以前と変わりはないのだけれど、妙に緊張してしまうのだ。こんな自分は少しおかしいと思う。実際ゾロもおかしいと思っているに違いない。なにも言わないけれど。ルフィもどうしたらこの現象が治るのか、よくわからない。

 遊園地でよかった、と思う。ゾロは遊園地なんてあまり来たことがなさそうで(なんとなくそんな感じだ)、とりあえずの主導権はルフィが握れるようだ。そもそもなんで遊園地か。そこでルフィはまた気づく。わざわざ苦手な遊園地にゾロがルフィを誘った理由なんてひとつしかない。ルフィが喜ぶと思ったからだ。そこに辿り着いてまた顔が熱くなる。とてもそばにいられないような気持ちになるのだが、離れるのもイヤなのだ。そんな葛藤を抱えてルフィは今日、どうしていいかわからない。ただ、コースターやら乗り物に乗ってるときはちょっと気が逸れるので、よい感じだと思う。そんなわけで選ぶものがみんな絶叫系になってしまう。少しゾロが辟易しているようなので、少し休憩をはさもうか、とも思うのだけれど、間が持つのかどうかが心配だ。

 順番が来て、コースターに乗り込む。ループはいきなりスピードが出る。グンッと後ろに引っ張られる感じもスピード感も逆さになって宙に浮く感じもルフィは大好きだ。が、ゾロは違うらしい。終わって、階段を下りる足が微妙にふらついている。気がする。

「・・・大丈夫か?」

腕をつかんで思わず聞いてしまう。バッチリと目が合ってしまった。そして慌てて手を離す。心臓がうるさい。

「そう、あんまり警戒するな」

ゾロが苦笑しながらそう言った。警戒、しているのだろうか?ゾロを?ルフィが首をかしげる。ゾロの苦笑が濃くなった。自覚がなかったらしい。

「とりあえず、メシでも食うか?」

ルフィは黙って頷いた。

 

「気持ち悪くなるのは、たぶん叫ばないからだな」

絶叫系、というからには絶叫するために作られているのだから、絶叫しないといけないのだ。ルフィがカフェでピザを食べながら言った。でも叫ぶゾロってどうなんだろう。見たいような見たくないような微妙なトコロだ。

「努力する」

ゾロがボソリと呟く。ゾロにしてみれば、自分の思わぬ弱点を発見して、少し落ち込まないわけでもなかったが、案外、丁度よかったのかもしれない、と思うことにした。自分が弱っている方が、ルフィも安心できるようだ。少し、口数も多くなって来ている。完全に警戒を解くまでには至らないけれど、これだけ弱っていれば身の危険はそう、感じなくてすむだろう。別に、今すぐどうこうしよう、とか思って言ったわけじゃないんだが。こう、意識されるのは、前進なのか後退なのか。難しいトコロだ。けれどここにこうして居る、ということは、自分が嫌われたわけではない、と思っていいはずだ。そこまで考えて苦笑していたら、ルフィの遊園地談義がピタリと止まってしまった。なにかしただろうか?と怪訝に思っていると、

「ゾロはずるい」

と俯かれてしまった。

 自分がおかしくなるのはゾロがずるいからだ。ルフィはそう結論づけた。今だって、結構調子が戻ってきたかと思ったのに、向かいの席で、ゾロが自分を見る目を見た途端、頭に血が上ってうまくしゃべれなくなった。こう、とにかく、優しいくせに熱い、というか。なんで今までこんな風に見られてて平気だったんだろう。

「次はもっとゆっくりしたやつにしような」

ルフィは最後のピザを食べながら、それだけ言うのがやっとだった。

 

 とりあえず、この状況はなんとかしたい。海賊船のアトラクションの列に並びながらルフィは必死で考える。ゾロの顔が見られないのもゾロに触れないのも、すごく困る。こうしている間にもゾロが隣で自分を見ているのがわかっていたたまれなくなる。いっそ見ないでくれたらこの症状も治るかもしれないけれど、視線を外されたら、たぶん自分は腹を立てるのだ。・・・我ながらめちゃくちゃで腹が立ってくる。自分ですらもこんなに呆れるくらいなのだから、いつゾロに呆れられるかわからない。いや、もう、呆れられてるかもしれない。ゾロに嫌われるのは一番困る。

 幸いこのアトラクションはゆっくりだし、それなりに時間もかかるし、なにより暗いところが多いから、ゾロに顔を見られなくてすむ。なんとかここでこの現状を打破しよう、ルフィは心に決める。具体的な策はなにもないけれど。順番が来て、船に乗り込む。並んでいる間、ゾロも一言も発していないことに気づく余裕はルフィにはなかった。

 船が動き出す。暗がりの中を進んでいく。水の流れる音が耳に心地よい。

「そういや、ちゃんと水の上進んでるかどうか確かめて叱られたな」

ポツリと呟いた。暗くて本当に水の上なのかどうかわからなかったせいだ。船の下に手を伸ばし通路に流れる水を確認したのはいいのだが、乗り出しすぎて、服まで水につけてしまい、兄にかなり叱られた覚えがあった。子どもの頃の話であるが。

「こういうトコロで使う水はあんまりキレイなもんじゃねェからな」

思いもかけず返事があってルフィは驚いた。そういえば、そんな風に怒られた気もする。見えないゾロの顔をじっと見る。こういう所もとても好きだなぁ、と思った。そうしたらゾロの影が近づいて来て、唇に何かが触れた。たぶん、これは、アレだ。すぐに影は離れて行って、また何事もなかったように隣に座っている。叫ばなかった自分の理性に驚いた。船の上で暴れるわけにはいかないから、ただ黙って隣の男をにらみつけた。どうせ見えはしないんだろうけど。暗いことがいいのか悪いのかよくわからない。ただ、この顔を見られなくてすむ、という点ではやはりよかったのだろう。この熱さから考えるとかなりすごいことになっているはずだ。この航海が終わるまでに治っているだろうか。由々しき問題だと思う。

 

「おい!ルフィ」

船を降りて出口を出て、どこへ向かうのか、早足で歩くルフィの後をゾロは追った。呼びかけに応えたのか、ルフィの歩みがピタリと止まり、振り返りざまに、殴られた。腹を。咄嗟に腹筋を締めはしたが、かなりのダメージが残る。こいつ本気で殴ったな、と少し咳き込みながらゾロは体勢を立て直す。

「あんなっ!あんなトコでっ!急にっ!」

小声な分、まだ理性が働いているようだ。こちらをにらみつけてくる目元がまだ赤くて、これは逆効果じゃなかろうか、とまた手が伸びそうになるのを堪える。

「お前があんな目で見てくるから」

ボソリと言い訳をする。ゾロは夜目が利く。暗がりではあったが、数分もすればだいたいのものはよく見えるようになった。子どもの頃の話をした後、今まで一切目を合わせようとしなかったルフィがじっとこっちを見つめてきて、それだけでもかなりのダメージだったというのに、その目が少し潤んでいるような気がして、つい、魔が差した。というかなんというか。今日は安全な男でいようと思っていたのだが、案外自分の理性は脆い。いや、あれだけで留まれたのだから強いのか?とにかく、今日はいろんな弱点が発覚する日らしい。

「一応、前回、予告はしたぞ?」

「警戒するなって言ったくせに!」

「安心しろ、とは言ってねェ」

ルフィはと言えば、船の中で顔を見られていたことがかなりショックであった。あの顔を見られていたと思うと恥ずかしさでどうにかなりそうだった。プツリ、となにかが切れる音が聞こえたような気がした。

 次の瞬間、ゾロは思い切り顔になにかをぶつけられた。・・・ルフィの着ていた赤いコートだ。

「あんな目で見られて大変なのはおれの方なんだからなっ!ゾロの方がそういう目でおれのこと見るからおれがおかしくなるんだろ!だから悪いのはゾロだ!絶対!!」

怒っている。怒られているのはゾロなのだが、なんだか笑い出したくなる。謝ってしまうのは簡単だが、もう少しこの状況を続けてみたいと思う。

「このコートにはなんの意味がある?」

決闘の手袋の代わりだろうか?と古風なことを考えた。

「厚着してたら、こないだみたくゾロがおかしくならないかと思ってたけど、おれの方がおかしくなってきたし、暑いからもういい!」

どうやら気を使ってくれていたらしい。少し見当違いの方向ではあるが。自分はすっかりおかしくなってしまっているのだ。手遅れである。その証拠に怒らせているはずなのに、なんだか嬉しいのだ。怒ってる所もかわいいからかな、と呑気に考えていたら、更にルフィの顔が赤くなって、そろそろなんとかしないとなぁ、と思った矢先、ルフィがなにかに気づいたようだ。

「わかった」

呟いたかと思うと今度はあれほど避けていたゾロの腕をがしっとつかむと、一目散にどこかへ走り出した。

 ルフィはなんで自分が怒っているのかよくわからなくなってきていた。というよりも、自分がこんなに怒っているのに、ゾロは相変わらずあの目をやめてくれない。それどころか、もっと優しくて甘い目になってきて、ルフィはどうしていいかわからなくて、悔しくなってきた。そして、唐突に気づく。悔しいのだ。自分は。

 ルフィの方が先にゾロを好きになったのだ。ちゃんとそう言ったはずだ。そもそもゾロは自分のことをちゃんと好きだと言ったことはない、気がする。それなのに、あんなこと言うし、こんな目で見るし、あんなことするし!・・・別にされたこと自体イヤじゃなかった気がするから、たぶん、自分の好きもそういう感じなんだろうけれど、でもまだよくわからない。わからないことは確かめるべきだと思う。それにこの状況はやっぱりおかしい。

 そしてルフィがしたことは、絶叫系フルコース。なんどもフリーフォールに挑戦したり、コースターもたまに交えて、ソロの顔色が完全に青くなる頃には日も暮れて、至る所にライトアップがなされていた。色とりどりの光は夜に映えて、大変綺麗なのだけれど、ゾロにはそれに目をむける余裕もない。

「次これな」

足元がふらつくゾロを引きずって、ルフィが次のアトラクションに向かう。ゾロは引きずられるままであったが、抵抗する気は起きなかった。このくらいのことがないと頭が冷えそうにない。ルフィと一緒に居る限り、完全に冷えるということはなさそうなのだが。

たいして並びもせずに辿り着いたのは意外なことに観覧車だった。

「気が済んだかよ」

ゾロが座席後ろの窓にもたれて多少恨みがましくそう言った。

「すまねェよ」

ルフィがあっさりそう返す。

「そんなにヤだったか?」

つい、下手に出てしまう。確かにルフィの承諾も得ずに、だまし討ちのような真似をしたのは事実なのだから、怒られてもしょうがない、とは思うのだが。そんなにイヤだったら、誘った時に断れよ、と、勝手なことを思ったりもする。するとルフィが向かいの座席から立ち上がって、室内が少し揺れた。その一動を不思議に思って見ていると、その顔が近づいて来て、まさかな、と思っていたらガツンと頭突きをくらわされた。

「・・・お前、脈絡をくれよ」

ゾロが頭を抑えながらうめいた。

「おれはゾロ好きだって最初っから言ってんじゃねェか」

ルフィが言い放つ。頭も赤いが顔も赤い。

「でもゾロはなんにも言わねェくせに、態度ばっかりで表してずるい!おればっかりドキドキしてるのはなんかものすごく腹が立つし悔しい!」

堰を切ったように怒鳴る。ゾロは呆気にとられてコメントのしようがない。怒鳴って気が済んだのか今度は少ししゅんとなって、

「おれの方がゾロのこと好きだからそれはしょうがないのか?」

トドメを刺された。

「・・・お前今自分が何言ったかわかってるか?」

頭を抑えていた手を顔の方に移動させてゾロが小声で呟いた。

「ゾロはずるい」

「お前の方がよっぽどずるい」

ルフィが反論しようとしたら腕を引かれてゾロの腕に抱え込まれた。弱らせたと思ったのにまた捕まってしまった。これはマズイともがいたら、耳元で

「好きだ」

と言われて、途端に身体から力が抜けた。

「ずるいっ」

「言っとくが、お前の方が乱用してるんだからな」

言われる度におれがどういう気になるか少しはわかれ。ゾロにそう言われ、ルフィは考える。そう言えば、さっきからうるさいこの心臓の音は、自分のだけかと思ったら、どうやら違うらしい。

「・・・ゾロもドキドキしたりしてるのか?」

「お前と会ってる時はいつもだ」

「なんだ・・・そっか・・・」

なんだか少し落ち着いてきた。自分だけじゃないならいいかな、と。

「だからそこで安心するな」

ゾロが苦い声で言う。またあの目で見られて、今度はちゃんと不意打ちじゃないにもかかわらず、金縛りにあったみたいに身体が動かない。降りてくる顔をぼんやり眺めていた。さっきもこんな顔でしたんだろうか。あれはでもゾロが見えてておれだけ見られなかったっていうのが不公平だ。そう思ったらなんとしても顔は見ておこう、とわけのわからない競争心にあおられていたルフィに、ゾロは苦笑して、それでも顔を近づけることはやめなかった。

 その時、ゾロの後ろにイルミネーションが見えて、ルフィはがばっと起き上がった。当然また頭突きをくらわせてしまったわけだが。

「あ、ごめん」

ルフィが気まずそうに謝る。

「今度はなんだ」

さすがのゾロも不機嫌そうだ。

「えーっと、今の時期しか見られないんだ。この景色。」

ルフィが申し訳なさそうに言った。そんな風に殊勝な態度に出られたら強く出られないのがゾロである。まして、相手はルフィだ。

「今の時期?」

「クリスマス・シーズン」

確かに、窓の下に見えるイルミネーションは平常よりも少し派手な気がする。しかし、ゾロの認識ではクリスマスは12月25日を指すものであって、シーズン、なんてものがあるとは初耳だ。

「だってこんなにキレーなのに、一日で外すの勿体ねェだろ」

ルフィが言うと、そんなものかな、と思ってしまうのだが、邪魔された分もあって、素直に納得しがたい。けれどまぁ、どうやらルフィの葛藤も解消されたようだし、今回はこんなもんだろう、とあきらめた矢先、頬に唇の感触があった。

「・・・!」

たかが頬にキスされたくらいでなぜこんなに頭に血が上るのか。

「な!不意打ちされるとすげェ恥ずかしいだろ?」

ルフィが勝ち誇ったように言う。

「・・・参った・・・」

ゾロはとうとう笑い出した。

「どうせなら口にしろよ」

「それはまだ修行が足りてないからムリ」

「他の奴で修行しようとか思うなよ?」

半分冗談、半分本気で口にしたら、また腹を殴られた。今度はあまり痛くない。

「あー、いくらでも修行には付き合うから。今度はちゃんと確認とってからな」

そう言ったら、今度は脛を蹴られた。

 

 ・・・今日は一日負けっぱなしだった気がする。一矢くらいは報いたような気もするんだけど。観覧車から降りた後、ゾロは上機嫌で、夕飯も結局奢ってもらった。なんかその余裕が気に入らない、とか思ってしまうのだが、夕飯はおいしかったし、ゾロが楽しそうだとルフィもやっぱり嬉しいので、その辺がまた難しい。いつもの反省会を開きながら、電車の窓からいつもの風景を見る。遠くに星が小さく光っているのが見える。さっきのイルミネーションとは違って、派手さはないし、本当に小さな光なのだけど、ルフィはこっちも綺麗だと思う。ゾロは今ごろ地下鉄だから、星なんか見れないんだろうなぁ、と思ったら少し淋しくなった。別れたのはついさっきだ。なのにそれでも今、隣で同じモノを見て欲しいと思うのは変だろうか。やっぱり病気は完治してないんじゃないかな、とルフィは少し心配になった。

 

 いつもならすぐに眠ってしまうはずの地下鉄の座席でゾロはぼんやりと床を眺めていた。ルフィと会った日はいつもそんな感じだ。座席が空いていたところで、落ち着いて眠れた試しがない。最後近くのフリーフォール三連続は自分にかなりのダメージを与えているはずなのだが、それを補って余りある今日のルフィだ。

 なんであぁもかわいいかな、とゾロは少し頭痛を覚える。絶対心拍数では自分の方が勝っている、と思うのだが。ルフィと会ってゾロは自分の知らなかった自分をやたら発見している。絶叫系の乗り物に弱いことも、かなり独占欲が強い、ということも。ゾロはルフィのことを実はなにも知らない。連絡先と、ルフィのことをとてもかわいがっている兄がいるということくらいだ。いまだお互いの生活に踏み込めないでいることに少し焦っているのかもしれない。きちんと捕まえておきたいのだ。夕飯を食べながら、ルフィはゾロばっかり余裕があってずるい、と言ったが、実際余裕があるのはルフィの方だと思う。さっき別れたばかりで、自分はもう逢いたくなっている。こんな自分も知らなかった。次に逢えるのはいつだろう。いつも次の約束をしないで別れてしまうのもなんとかしたいと思うのだが、次のことを考える余裕がなかなかできないのだ。

 地下鉄が最寄の駅に到着する。階段を上り、外に出ると空にはいくつかの星。降るような、とは言えないけれど、ゾロは人工のイルミネーションの光よりも微弱な空の星の光の方が綺麗だと思う。空を見上げるなんてことも、星の光を綺麗だと感じることも、ルフィと逢って覚えたことだ。ゾロは白い息を吐きながら、ルフィもこの星を見ているだろうか、と少し笑って、家路を辿った。

 

2004.12.13UP

うわー。

あまりのベタさに引いてしまう方もいるやもしれませんな。

自信をもって言えることは一番恥ずかしいのは

このワタクシであるということでしょう・・・。

ほんとに恥ずかしい・・・。

いや、これはこういうベタなシリーズなんですよ・・・(弱い)。

いや、ほんとにスミマセン・・・。

こんな二人イヤって人・・・ごめん・・・。

 

 

 

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