二十六夜待  ※春で朧でご縁日という話の続きになっております。

5.

 

 ゾロはため息をひとつ吐いた。提灯の灯がゆれる。三日前までとは打って変わった静けさに、自分の吐く息がやけに大きく聞こえた。三日目まではルフィと一緒に見回りをしていたせいで、そんな場合ではないのに、不謹慎にも楽しかった。しかし、これは務めなのだと引き締める。少し距離をおくのもよいのかもしれない。

 どうにも、ルフィは迂闊だと思う。隠しているのだから責める資格はないのだが。起きぬけに、目の前に顔があったら、まず夢かと思う。そのまま手がのびても致し方ないのではなかろうか。あの朝、ゾロを襲った恐慌は、思い出すだけで頭に血が上る。ルフィの寝顔と寝相は凶悪だった。触れる寸前で正気に返った自分を褒めたい。

 ルフィはわからない顔でゾロの説教を聞いていたが、なんとか、他人の寝所に入るのはよくないことだという部分は納得してくれたようだった。実のところ、ゾロの前で眠る危険性を説いたつもりだったが、その辺りはたぶん伝わっていまい。

 まぁ、当分はあのようなことは起こらないに違いない。ルフィはこの三日ばかりゾロを避けている。理由はわかりやすすぎるほどだ。あんな話を聞かされれば、無理もないことだろう。

 ゾロはもう一度ため息を吐く。月のない晩で、目の前は提灯がなければ一寸先を見通すこともできなさそうな闇だった。確かあの時もこんな晩だった。

 まだ、父や母が存命だった頃には、ゾロもそれなりに羽振りもよく、また、剣術道場での自分の強さにも自信を持っていたから、結構、好き勝手に遊んでいた。賭場や吉原への出入り、喧嘩や果し合いなどもしょっちゅうで、恨みを買うことも多かったのだろう。

 賭場の帰りか吉原の帰りか、どの道ろくな理由ではなかったと思うが、夜道を帰る途中闇討ちにあったのだ。いきなり複数人に斬りかかられて、ゾロは提灯を斬られ、明かりを失った。だが、それは敵方にも不利に働いたようで、提灯の明かりを頼りに闇討ちを仕掛けてきた賊の間にも動揺が走った。

 そうなると、一人であるゾロの方が有利と言えた。ゾロは気配を頼りにその場にいたものを全員斬り捨てた。十人近い人数を斬ったはずだ。そしてそのまま家路についた。提灯が燃えてしまったので、賊の正体を確認することもしなかった。興味がなかったこともある。夜討ちを仕掛けてきたものを、自分は返り討ちにしただけで、とがめだてされる謂れはない。

 夜が明ければ、相手側が夜討ちを仕掛けた側であることは明らかになるだろうし、特に届出をする必要性も感じなかった。賊が武士であれば、家のものが表沙汰にはすまいし、町奴などであれば、斬捨て御免が適用されるだろう。

 その死体の中に、自分の許婚がいたことを知ったのは、翌日のことだった。

 なぜ、その場に居合わしたのかは、未だわからない。ゾロに用があり、たまたま迎えに出ていたところなのかもしれない。夜分であったにも関わらず、侍女を連れてもいなかったことから、賊の手によって拉致されていたものかもしれない。その切り札を使う前に、ゾロがすべて斬ってしまったのかもしれない。

 あるいは、たまたま、斬り合いとは別の事件が起こったのかもしれない。許婚の最期について、ゾロは何も知らない。斬られ方で自分が斬ったのかどうか確認できるはずだったが、それを見聞することは許されなかった。

 縁談は、家が決めることであり、ゾロにはまったく興味がなかった。だから許婚がいてもゾロは好き勝手にふるまった。結婚とは家のためにするものだ、とどこかで割り切ってもいた。相手も同じだと思っていた。さる藩主の娘で、この縁談がまとまれば、ゾロの家は大きな後ろ盾を得ることになったはずだ。

 ゾロの夜遊びを黙認していた両親ではあったが、ゾロがその場に居合わせていた可能性が高いことを告げると、烈火の如く怒り、蟄居を命じた。他言は無用であると固く口止めもされた。

 嫁入り前の娘が、そのような時間に外にいたことは外聞が悪い、と相手先の家も、このことを表沙汰にする気はなかったようだ。娘の死は病死と届け出られた。他の死体についての情報はゾロには入ってこなかったが、おそらく、似たような理由で処理されたのだと思う。

 ゾロが武家のありように疑問を持ったのはこの時だった。

 縁談が破談になり、ゾロの家も左前に傾く。そのせい、ということもなかろうが、両親が相次いで他界した。ゾロは道場へ行くこともなくなり、そのまま酒に溺れた。

 剣はなによりもゾロが優先していたことだ。ただ、自分が人を斬るときに感じた高揚を、ゾロは恐ろしく感じた。本当は、許婚と知って斬ったのではないか。斬れるならば誰でもよかったのではないか。それからゾロは真剣を持つことをやめた。それでも竹光を持って、剣術を捨てられなかったのは、未練としか言いようがない。

 ルフィがゾロに対してよそよそしくなったのは、この話をしてからだ。ルフィはゾロが言いたくなければ聞かない、と言ったのに、なぜ話してしまったのか。誰にも告げたことのない話だったのだが。自分の中の重荷を誰かに告げることによって下ろしたかったのかもしれない。

「それで嫌われては、世話がない」

 それならば、ルフィ以外でもよかったはずだ。やはり、ルフィに対して、嘘やごまかしを告げることをよしとしなかった結果だろう。

 ルフィはもう眠っているだろうか。それでもまだ、ルフィはゾロの屋敷に留まってくれている。単に住むところがないせいなのかもしれないが、少しでも望みはあるのだろうか。二十六夜待ちまであと四日。この分ではケリをつけられそうにないが、もし、ケリがついても、あの約束が有効かどうか。

 ゾロはまたため息を吐く。腰の刀が一段と重くなった気がした。

 

 ルフィは盛大なため息を吐いた。なにもかもがうまくいかない気がしていた。相変わらずワイパーは見つからないし、ゾロの顔は見られないし、目貫も渡せずじまいだし、ゾロには許婚がいたし、言いたくないことを喋らせてしまったし・・・とほとんどがゾロに対する案件となっていることに、ルフィは気づかない。

 ルフィにしては珍しく、どんよりとした空気を纏ったまま、市井を歩く。あまりにすっきりしないので、どこかの組にでも殴りこみをかけようか、とも少し思った。が、なんだかそれも面倒な気がする。やたらに喧嘩を売って、周りに迷惑がかかっても困る。昔とは違うのだ。ルフィは一人ではなく、大事な人もたくさんできた。

「あんな目立つ奴、すぐ見つかると思ってたんだけどな・・・」

 ワイパーが見つかれば、案件のひとつは片付くのだ。アイサの懸念は、ワイパーが辻斬りでなかったことで晴らされてはいるので、ルフィがまたワイパーを捜す必要はないと言えばない。が、ラキやアイサのことを考えると、やはりもう一度、言うべきことは言って、あの二人に対する回答を用意しなくてはいけない。個人的にもこのまま放り出すのは気持ちが悪い。それにワイパーも辻斬りを追っているらしいので、なにか手がかりがつかめるかもしれない。これはゾロの推量なのだが。

「でもなんだって、渡世人が辻斬り追っかけるんだろなぁ・・・」

 さっぱりわからない。わからないことだらけだ。きちんと捜しているつもりなのだけれど、どこかで見つからなくてもいい、と思っているのかもしれない。ワイパーを捜す、という名目で、ルフィは今、ゾロと顔を合わすことが少なくてすんでいる。そのような考えに行き当たって、ルフィはぶんぶんと頭を振った。

「ちゃんと、二十六夜待までに、全部終わらせて、きちんと謝んねェと・・・」

 それまでに、なんとかこのもやもやともケリをつけたい、とルフィは思う。このところ、自分は大変イヤな奴なのだ。ゾロに合わせる顔がないのである。けれどなかなか治らない。それが目下ルフィにため息を吐かせる一番の理由だった。

「あれ?」

 見覚えのある姿が、目の前を小走りに通り過ぎていくのが見えた。

「コニス?」

 声をかけてみたが、聞こえなかったようだ。あんなに急いで、どこへいくのだろう。ルフィは特になにも考えず、コニスのあとを追った。コニスは周りが目に入っていない様子で、風呂敷包みを後生大事に抱えている。急ぎの使いなのかもしれない。コニスは大川端を少しいって、右に折れた。大小の寺のあいだにごみごみと町屋があって、少しはずれると、旗本や御家人の屋敷が並ぶ、ゾロの屋敷の方面だ。

 パガヤの店の品物は、大店の娘にも好評だと聞いていたから、どこぞの武家の娘からも注文があったのかもしれない。ルフィはいかめしい築地塀の脇を通りながら、さっさとコニスに声をかけない自分を不思議に思っていた。目前に寺の練塀が見える。

 傾きかけた山門の前で、コニスはいったん立ちどまると、それから土塀にそって歩き始めた。ルフィが門を確かめると、門の屋根の下に額があったが、山号も寺号も汚れていてわからない。仮にきちんと判別できる文字であったとしても、ルフィに読めたかどうかは自信がないところなのだが。

 あきらかに、手入れがされておらず、廃寺であることは確かなようだが、門には貫木(かんぬき)がさしてあった。ルフィは門を壊したい衝動にかられたが、なんとか我慢して、コニスの歩いた方向へ、土塀にそって歩くことにした。寺の土塀はあちこち崩れていて、一箇所は人が出入りできるほど大きく裂けていた。

 ルフィは塀のうちを覗いて、崩れたところから中に入った。五輪の塔はあるが墓がなく、檀家のない寺だということが知れた。誰かが住み着くこともできるだろう。藁葺き屋根の本堂が見えた。コニスがなにかを話しかけている。ルフィはゾロの言っていたことを思い出していた。当たり、なのかもしれない。

 それからコニスは風呂敷包みを本堂の障子の前に置いてこちらに向かってきた。

「あ」

「・・・ルフィさん?」

 その場でとっさに隠れるなんて芸当ができないルフィであったので、あっさりコニスと対面してしまった。

 

「やっぱり・・・あそこに居るんだな・・・刺青の・・・男」

 ルフィは鰻飯を頬張りながら、コニスに話しかけた。ちょうど昼飯時だったので、コニスと二人で鰻屋に入ることになった。食べ物を馳走する、と言われるとすぐにごまかされてしまうのは、ルフィの弱点のひとつだ。これでも一応、本堂にいると思われる男に会うべきかどうか迷いはしたのだが、鰻の一言は大きかった。

「なんだって・・・コニスが、知ってるんだ・・・?」

 コニスは俯いたままだった。

「そんなツラしてっと、飯がまずいのかと思われるぞ?」

 コニスがあわてて顔を上げる。ルフィはそ知らぬ顔で、

「おれが捜してんのは、ワイパーって奴で、コニスんとこのアイサの兄ちゃんだ。これ言ったから、ナミにすげー怒られて、コニスもおっさんもいい奴だから、そんなことでアイサに暇出すようなことしねェって言っといたけどよかったか?」

「アイサはよくやってくれています。暇を告げたら困るのはうちの方ですから」

 コニスが少し微笑んだ。

「よかった」

 ルフィも笑う。

「それでな、アイサのほかにもそいつのことを待ってる奴がいる。あいつがどういうつもりか知らねェけど、ジョセイを待たせたまま放ったらかし、ってのは許せん、とおれの友達が言ってる。おれは戻って来てるなら顔出したってばちは当たらねェぞ、とも思うし、なんの決着もつけずにいるのはずるいと思う」

 コニスの表情がまた少し沈んだ。

「あの人を・・・待ってる方が・・・いらっしゃるんですか・・・」

「うん。おれはそいつとも友達だから、なんとかしてやりてェな、とも思う。そんで、そいつのことを好きな奴もいて、そいつがまたいい奴そうな印象なんだけど、イロコイザタはいいヤツが勝つとは限らないんだ、ってサンジが言ってた」

 コニスはルフィの口から知らない名前がいくつ出てきても、不審そうな顔はしなかった。ただ、

「その方は、あの人が渡世人になっていることを知っているのでしょうか?」

 ルフィが首を傾げる。

「どうかな?そういやおれはまだなんにも言ってねェけど。5年以上も経ってるし、あいつ昔からあんな感じみたいだから、うすうす見当はついてるかもなぁ」

 今度、ラキに聞いてみようかと、サンジやナミが聞いたら殴られること請け合いのことをルフィは考えていて、

「そうですか・・・5年も・・・」

 コニスの顔がどんどん暗くなっていくのに気がつかない。

「あの風呂敷包み、なに入ってたんだ?」

「・・・着物と、食事です」

「着物?」

「初めてお会いしたとき、怪我をしてらして・・・着物も斬られてしまっていたようなので、お預かりして繕いを・・・」

 辻斬りと会ったのか、あるいは渡世人によくある子競り合いか。

「よくあんな渡世人から着物剥いだな」

 ルフィは普通に感心して言ったつもりだが、コニスは少し頬を赤らめて、

「私も普通の渡世人の方は恐ろしいですが、あの人は怪我をされていましたし・・・」

 普通の渡世人よりよほど怖いと思うが。怪我をしていたから放っておけなかった、ということだろうか、とルフィは結論づけた。

「うん。そうか。コニスは偉いんだな」

「そんなことはありません・・・」

 褒めたつもりだったが、コニスは浮かない顔をして否定する。

「おかしいですよね。私、顔も知らない女性に嫉妬してるんです。ちっとも偉くなんかなくて・・・」

 今にも泣き出しそうなコニスにルフィは身構えた。自分がなにか言っただろうか、と周りを見回すも、誰も二人の話など聞いていない。

「えぇと・・・それは・・・つまり・・・」

 またルフィの一番得意でない分野の話らしい。しかしここにはサンジはいないし、今からサンジのところにコニスを連れて行くわけにもいきそうにない。

「やっぱり後から好きになっても迷惑になるだけなんでしょうか」

「・・・どうなんかな・・・。好きになるのに後も先もねェ・・・と思う・・・けど・・・」

 それで言ったら、ルフィは絶対、ゾロの許婚に勝てないことになってしまう。その上相手は亡くなっているし・・・という自分の思考にルフィはちょっと驚いた。なぜ、自分がゾロの許婚に勝つ必要があるのだろう。

「でも・・・住む世界も違いますし・・・」

「そう・・・だけど・・・気持ちが大事なんじゃねェのか・・・?そういう・・・ことは」

 けれど商家の娘と渡世人では、違いすぎる。旗本の殿様と一介の町人と同じくらい違う。

「・・・ルフィさん?」

 今度はルフィの方が暗くなっていた。コニスの心配そうな声にルフィもあわてて立て直す。

「おれは、コニスとも友達だけど、ラキとも友達だから、なんとも言えねェし・・・渡世人にかかわったっていいことはねェ、とも思うけど・・・」

 頭でわかっていても、どうにもならないこともあるのだろう。なんだかルフィは腹が立ってきた。がたりと立ち上がる。

「ありがと、コニス。飯うまかった!お前もきちんと食え!腹が減ったら戦えないぞ!」

 呆気にとられているコニスを置いて、ルフィは鰻屋を出た。ものすごい勢いで、ルフィは廃寺に戻る。山門を蹴破って、本堂の障子を乱暴に開けると、いきなり横一閃に太刀が振られた。ルフィは咄嗟に後ろに飛びのく。危ないところだった。あんなに派手に門を蹴破れば、気づかれない方がおかしいのだが、ルフィは少々冷静さを欠いていた。

「てめェか・・・なんの用だ・・・」

 正面の本尊は木像で、片腕と顔半分がなくなっていた。天蓋はさがっているが、瓔珞はひとつもない。その前に、刺青の男が太刀を片手にこちらを睨みつけている。

「お前がはっきりしないから、おれがなんかもやもやした気になるんだろうが!」

 ルフィも負けじと言い返した。が、まったくの逆恨みで、言われた方はなんのことだかさっぱりわからない。

「難癖つける気か?」

 更に剣呑な表情に変わる。

「アイサもラキもコニスもおれの友達なんだからな!ちゃんとはっきりさせろ!」

 今度はルフィも討ってでた。

「後から好きになられたって、迷惑じゃねェよなっ!」

「あぁ?」

 どうにもワイパーを捜す理由を見失ってしまったようだ。障子は外れ、燭台が倒れ、桟が折れる。ワイパーの太刀はゾロの言うように、横に払われるものばかりで、辻斬りの太刀筋とは違う。剣技は単調で、避けることはそんなに困難ではなかった。だが、太刀相手に素手では多少分が悪く、ルフィは木魚を投げたり、本尊を蹴り飛ばしたり、大変罰当たりな戦い方をした。

「お二人とも止めてください!廃寺とは言え寺社内でこんな騒ぎを起こしては、どこかのお屋敷から届けが出るかもしれません」

 二人を止めたのは、コニスの声だった。

 

「・・・だからと言って、なんでこんなことになるんだ・・・?」

 ゾロの声は怒っている。かなり怒っている。ルフィは正座をしたまま、ゾロの顔を伺った。隣には、なぜかワイパーが憮然とした顔つきで胡座をかいて座っている。

「いや・・・こいつが住んでた本堂、うっかり壊しちまって、あれから奥の小大名の屋敷から人が出てきたりで、あの廃寺、使えそうになくて・・・そんで・・・」

「ここに泊めることになった・・・?」

 静かだが怒っている。

「ほら、ゾロも辻斬りのこと聞きたいって言ってたし!二人とも辻斬りに用があるんだろ?」

 明らかにとってつけた理由だが、確かにゾロにとってもこの男の所在が知れている方がよいかとも思う。ただ、この男があっさりこちらに協力するとは思えない。

「・・・お前は辻斬りになんの用がある?」

 刺青の男は答えない。ただ不本意そうに、ゾロを睨みつけるのみだ。

「どこの一家のものか知らんが、この辺りではないのだろう。他所から来た男がこの町で、いきなり辻斬りを捜す理由がわからん。それも、他の一家に草鞋を脱ごうとはしないって点もな。親分からの密命でも下っているのか?」

 ワイパーが殺気だった。存外、嘘の吐けない男らしい。

「泊めてくれと頼んだ覚えはない」

「うん。おれもコニスに頼まれただけで、お前には頼まれてねェな。そういや。」

 ルフィもあっさり頷いた。

「そんで、お前もコニスに言われたから、しぶしぶここにいるんだよな。」

「あの娘には、多少なりとも恩がある。頼んだわけじゃねェがな」

 ルフィは、ぼそぼそと呟くワイパーを見てからゾロを見上げる。

「な!ゾロ、こいつそんなに悪い奴じゃない印象だろ?」

 顔を上げるルフィに、ゾロはやっぱり顔を顰めて、それから目を逸らした。ワイパーも同様に顔を顰めている。

「辻斬りに会ったら、斬るつもりか?」

 ゾロはワイパーに質問を続ける。

「答える必要はない」

「一度、遭遇したらしいな。斬りかかられて手傷を負ったのだろう。」

 ワイパーがぎりりと歯軋りをする。

「屈辱を晴らすために斬るつもりなら、それはそれでかまわんが、そのことを親分は知ってるのか?」

「親分は関係ない」

「そうか」

 ゾロはあっさり引いた。

「部屋なら空いている。ルフィが泊めたいというならおれはかまわん。どうせ、夜は外に出るのだろう」

 そう言って座敷を出ようとしたが、

「あの、ゾロっ!」

 ルフィの声に動きを止める。

「えっと・・・勝手してごめんなさいっ。」

「かまわんが、奴が明日、ここに戻ってくるかはわからんぞ?戻ってくれば、アイサが来るまで足止めできるだろうがな」

 ルフィは少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑った。

「うん。出来りゃ会わせてやりたいんだ。」

 ゾロは久しぶりに変わらないルフィの笑顔を向けられて、心底ほっとした。どうやら、本当に嫌われたわけではなさそうだ。

「だから、明日まで、おれあいつに張り付いてるから」

 ほっとしたのはつかの間のことだった。

 

 

 2007.10.31up

半年以上開くってどうなんですか。

一部の方には大変お待たせしました。

いつもよりちょっと短い気するんですが、

きりのよいとこで(よいか?)。

次はこんなに開かないといいなぁ・・・。

 

 

 

 

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