春で朧でご縁日
8.
「じゃぁ、つまり若旦那を殺したのはあの浪人で、あの浪人を殺したのがあの尼たち、ってワケ」 ナミが顔を顰めた。ルフィの下手な説明でもなんとかわかってもらえたらしい。ルフィが寮に戻って、ひと寝入りしたため、お天道様は既に高く上っている。 「でもそれでおしまい、じゃなんか納得いかないわね」 「そうなんだけどな」 ルフィはナミと別れたあと、サンジに連れられてゼフと会ったこと、そこで黒装束に襲われてひとまず退いた(逃げたのではない、とルフィは思う)こと、そして更に尼たちにかどわかされたこと、そこでロビンに聞かされた話まで、しどろもどろではあるが、なんとか話し終えた。 「とりあえず、あの尼たちとは一時休戦ってわけね。なかなかかしこいわよルフィ。どこまで信用できるかわからないけど、話の筋は通ってるし。一応手を結んで邪魔を取り除くってのはなかなかの策だわ」 「サンジに言っとく」 「そのサンジってのは何者だ?」 黙って話を聞き終えたゾロが口を開いた。 「泥棒で板前で、じょせいのたつじん」 「うさんくさい」 どうにもゾロはサンジが気に入らないらしい。 「うさんくさいのはおれも変わらねェけどな」 「お前は違うだろ」 「確かにあやしさのカケラもないものね」 褒められているのかけなされているのかよくわからない。 「まぁあんまりそいつには近づかねェ方がいいと思うが」 「なんでだよ。サンジいい奴だぞ?」 「お前基準のいい奴でもな・・・」 ルフィにかかればゾロもナミも「いい奴」になってしまうのだ。あまりアテにはならない、とゾロもナミも思うのだが。 「おっさんトコにメシ食いに行くって約束したんだ」 と、ちょっと困った顔ではっきり言われては、白旗をあげるしかない。きっとルフィが一度決めたらなにを言ってもムダだ。二人はため息をつく。 「ところでルフィ。あんた黒装束が片付いたら、その尼たちと一緒に宝捜しに出かけるつもり?」 「うん」 ルフィが不思議そうに頷く。なにを今更?って顔だ。 「あ、でもビビにちゃんと話さないとな。ビビが反対したらこの話もなくなるわけだし」 「ビビには私から話してあげる。あんたの説明わかりにくいから」 やはりわかりにくかったようだ。そんなことねェよな、とゾロに目をやればゾロは壁にもたれている。やがていびきがきこえはじめた。そう言えばゾロはルフィが眠っている間にルフィの長屋まで着替えをとりに行ってくれていたのだ。なんだか急に申し訳ないような気分になった。そういえばゾロはれっきとした旗本だ。長屋のみんなはどう思ったのか。気になる。 「じゃ、ルフィ。ビビのトコ行って、それから私を送ってくれる?」 「え?ゾロ寝てるのに?」 「話の流れからしてそうでしょ。善は急げって言うしね。その殿様が寝てるのはいつものことだし、私もちょっと眠くなってきたもの」 そういえばナミも眠れていないはずだ。 「えーと、ごめんな?」 「お互い様よ。あれから真っ直ぐ帰らなかったのは、ちょっとムカムカしてたせいでしょ?」 「あ」 思い出した。今の今まで忘れていたのだが。 「思い出したくなかった?」 「意地悪か?」 「うん。まぁ、一晩文句言われたからねぇ。吉原なんか連れてくからだって。むっつり黙って飲むのは今に始まったことじゃないけど。心配だったみたい。いろいろ。この殿様があちこち奔走してあんたの長屋に辿り着いて、借金取りみたいにあんたの長屋から着物持ってくるトコを怯えながら見守る長屋の面々、なんて面白いものも見逃しちゃったしねぇ。」 これくらいの意地悪はしてもいいと思うのよ。と笑われた。ナミの説明も大概わかりにくい。でも確かにそれは見ものだったろうなぁ、と不謹慎にもルフィは思う。 「あとね、さっきの寝間着、とっとくといいわよ。似合うから。」 元より、ルフィには着られる物を捨てるなんて発想はない。
ビビとイガラムにことの顛末を(ナミが)話し、その承諾を受けた。やはりビビたちには秘宝の在り処がわからないらしい。当面尼たちと手を結ぶのは得策だとのことだった。そしてナミを無事家に送り届け、寮に戻ると、日もうっすら暮れかけていた。 「ただいまー」 庭から縁先にあがり、そのまま座敷に向かう。 「おかえり」 障子を開けるとゾロが壁にもたれて手酌で飲んでいた。今朝見た景色との違いはナミがいるかいないかだけだ。膳の上には料理が手付かずで残されている。 「お前の分だ。食うだろ?」 ルフィは大きく頷いた。本当にゾロはルフィのことがよくわかる、と思う。躊躇わずゾロの前に座り、膳に箸をつけた。ゾロはなにも聞かず、ただ黙って酒を飲んでいる。 「ゾロ、ごめんな」 「なにが」 「心配かけて」 「いや、別に大して心配はしてねぇ」 「でもナミが言ってたぞ」 「あの女の言うことはあまり真に受けるな。あー、確かに少し考え事はしてたが」 「なにを?」 「なんでこんな気になるんだろうな、と」 「こんな気?」 ゾロは困ったような顔をして頭を掻いた。 「説明は無理だが、そんなこと思ってもしょうがねェのに気がついたら思ってる」 「あ、それ、おれも思った」 吉原でゾロの話を聞いたときに感じたムカムカの正体はまだわからないままだ。 「ゾロは考えてわかったのか?」 自分のムカムカの原因を探る参考になりはしないかとルフィは聞いた。 「わかったところでどうにもならねェだろ。たぶん、わかりたくねェんだろうな」 「なぞなぞか?」 ルフィが顔をしかめる。ゾロの説明もわかりにくい。 「おれの問題だ。お前が気にすることはない」 ゾロはルフィの頭をポンとたたいた。 「お前は今考えることが他にいろいろあるだろう」 優しい声だ、とルフィは思う。けれどなぜか遠くから聞こえるような気がする。 「うーん」 「どうした」 「早く黒装束襲ってこないかな」 こんな風に曖昧なことを考えるのは好きではないのだ。よほど命のやり取りをする方が楽だと思う。するとゾロが笑って言った。 「同感だ」
とつぜん息が苦しくなってルフィは顔をあげた。行灯の灯にみわたす室内には何事もない。ただゾロがいるだけだ。けれど急に空気が濃くなったようななんとも言えない違和感を覚えて立ち上がった。 「来たかな」 「希望通りだな」 ゾロもゆっくりと立ち上がる。手足に力をこめた瞬間、室内の空気が外に向かって噴出した。そうとしか思えない力で障子が吹っ飛んだ。雨戸も一枚残らず、庭へ向かってはじけ飛んだ。はっとした時には、庭から飛び込んできた黒装束で、座敷がいっぱいになっていた。ルフィはすでに胸元に白刃をつきつけられていた。それも左右から二本の刀だ。 「迷子札を隠した場所を言ってもらおう」 前に立った男が低く言った。見上げる目にその男はいっそう背が高く見えた。 「・・・お前、イガラムのおっさん斬った奴だな」 「まったく忌々しい男だ。あの手傷でまだくたばっていないとは」 頭巾の下の目がぎらぎらと光るのを、ルフィは見返しながら聞く。 「忍びの者の里の奴か?」 「ロビンに聞いたのか。いかにも、おれが頭領だ。迷子札6枚、隠した場所を言ってもらおう」 「おれがロビンと一緒だったのを知ってるなら、聞くまでもねェだろ。おれの手元にはもうねェよ」 左右から胸元へ、白刃をのばしている二人の黒装束に目をくばりながらルフィは答えた。 「嘘をつけ、迷子札が手に入ったのなら、尼のひとりがここを見張っているはずはない。」 頭領は冷ややかに言って、かたわらの黒装束をかえりみた。 「見せてやれ」 うなずいた黒装束は、片手にさげていたものを、大きくふった。黒い布のつつみがとけて、布は男の手にたれさがり、中味が畳の上にころげた。若い尼の首だった。 「・・・てめェっ!」 「少々うるさいな」 ルフィの激昂に頭領は冷たい視線を投げかける。途端に胸に痛みが走る。ルフィの左に立っていた男の持った白刃がルフィの右胸をすべった。おどしだ。深くはない。ただまた着物がダメになった、とルフィは怒りで頭に上っていた血が下がるのを感じた。怒りで我を忘れるのはよくない。 「ひでェものを持ち込みやがる。ルフィ、こいつらなにをするかわからん。お前が言わねェのならおれが言う」 ゾロの声がした。 「ビビを裏切るようですまんがな、お前のことはどうしても助けたい。ほんとうのことを教えても大丈夫だろうよ。あぁ、もともとお前は嘘を吐いたわけじゃぁねェが。」 ルフィは嘘をついていない。手元にないのは確かなのだ。 「いくらこいつらが無法でも、花の吉原の大門へ黒装束で駆け込むことは出来ねェ相談だ」 「そうかもしんねェけど」 こんな奴らに迷子札を渡すのはイヤだ。と思いながらルフィはゾロにまだ菱まんじ屋のどこに迷子札を隠したのか話していないことに気がついた。 「客になってくりこむより手のねェところに隠したんだ。大まがき六軒、お職を張っている六人の花魁に、おれの口利きで頼んだのよ。その六人の花魁が、本部屋の箪笥の底に一枚ずつ、迷子札はしまってくれている。どうするね。」 今度はゾロが冷たく言うと、頭領はしばらく、目を光らせて黙り込んでから、 「知恵者だな。敵ながらあっぱれだ。店の名と女郎の名は?」 「女郎などと安く呼ぶな。西河岸じゃねぇのだ」 そうしてゾロは六軒の大まがきの六人の花魁の名をあげた。ずいぶんと詳しい。そんな場合では全然ないのだが、ルフィはまたムカムカが再燃していた。 「紹介がなけりゃ客にはなれねェぜ。大金をつんで客になれたとしても、店に送られるときには大小は預けなきゃならねぇ。迷子札は本部屋の箪笥の中だが、よっぽど身なりをこしらえていかねェと、まわし部屋にほうりこまれて、名代の新造をあてがわれる。知らねェと恥をかくから教えてやるが、名代できた女には、手を出しちゃいけねぇのが、廓の作法だぜ」 詳しすぎだ。斬られた痛みよりムカつきの方が強くなっていた。 「見事だ、とほめておこう。尼たちには手も足も出せない」 と、頭巾のかげで頭領は低く乾いた笑いをひびかせて、 「だがわれらには造作もない。吉原に火を放てば、この姿でも入り込めよう」 頭領が片手をあげると、黒装束たちは一斉に庭におりようとした。その一瞬の隙をついてルフィが二人の黒装束の拘束をとき、自分の腕を掴んでいた手を逆にとり、捻りあげてのばした。骨の折れる手ごたえはあったが、黒装束は悲鳴ひとつあげない。別に痛がってほしいわけではないけれど、こういうのはなんとなく気味が悪くていやだ。空いた足で首すじに蹴りをくらわせると、やはり悲鳴をあげたりはしなかったがどさりとひとり倒れた。ゾロも竹光をぬいて、黒装束のひとりに迫っていた。相手が斬り込む刀をはずして、竹光が風を起こした。相手がうめいて前にのめると、ゾロはその手から刀をもぎとって、 「とりあえず、お前とお前はたたっ斬る」 左手につかんだ刀で頭領と一人の黒装束を指した。 ルフィは柴折戸のそばで走り出ようとする黒装束を押しとどめていた。無言のまま斬り込んでくる相手の刀が振り下ろされる前に鍔に蹴りを入れてはじき返す。相手が体勢を崩したところに突きを入れた。 「ひけ、みんな舟に乗れ」 頭領の声が響く。ゾロは眼前の黒装束を斬り倒して、竹垣をおどり越えた。 「てめェは斬ると言ったはずだ」 ゾロが頭領の前に立ちはだかる。何人かの黒装束たちは次々と舟に飛び乗り、一艘、二艘と岸を離れて川中に出ていった。 「また舟か!」 ビビに言って舟を用意してもらうべきだったと一瞬ルフィは思った。が、どの道ルフィに舟は漕げないし、ゾロは言わずもがなだろう。けれど奴らは吉原に火をかけると言っていた。そんなことをさせるわけにはいかないのだが、いかんせん、ルフィは泳げない。ひとっ走りして、吉原の堀前で待ち受けるか、と思い至ったところで、黒装束を乗せた4艘の舟の行く手に、黒衣の尼たちを乗せた黒い舟が三艘、空に上った月の光を浴びて迫ってきていた。小さな錨型の刃物をつけて、黒い鋼が幾筋も尼たちの舟から飛んだ。黒装束の男たちは刀を抜いて、それを切り払おうとする。だが、ひとりが避け損ねて錨を打ち込まれた。そのまま鋼を引かれ、舟ばたを越えると川水に呑まれていった。 ルフィは少し顔を顰めたが、あちらの方は任せてしまっていいと判断した。ゾロはと見れば、頭領の太刀を右手の刀で受け止めると、左手の刃を逆袈裟に閃かせた。しかし一瞬の差で頭領は太刀をかわした。今度はゾロが踏み込む。まさに一瞬の動きだった。踏み込むと同時に2本の刀が交差したかと思ったら、頭領の胸に袈裟がけの傷が二本交差しており、そこから血が噴き出していた。頭領の黒いすがたが、棒立ちのまま、ゆっくりと後ろに倒れていき、水に落ちた。ルフィは一連の動きに見惚れる。人が斬られているのに、その太刀筋をキレイだと思う気持ちの方が強いことに少し驚いた。
雨戸も障子も、外れたままの座敷で、ルフィとロビンが向かい合っている。ルフィのわきにはゾロがいて、壁にもたれかかっている。 「やれやれ隣の寮に誰もいなくてしあわせだったぜ。確か隣は金座の役人の寮だ。さっきのさわぎを黙っちゃいめぇ。お前ら一族の怨みでも欲でもいいが、大立ちまわりをやらかすなら場所を選んでもらいてェもんだ」 顔をしかめてゾロにしては珍しく、口こごとを言っている。 「あと、ルフィ、傷口に触るな」 「あ、うん」 傷口というほどのものではないが、ゾロが酒をかけたせいで少ししみるのだ。消毒なのだそうだ。酒とは薬にもなるらしい。傷は別にいいのだ。こんなのはすぐに治るに違いない。ただ、その時のゾロの顔が、この傷を見たゾロの目が、なんだか大変ルフィを落ち着かない気にさせたのだ。それを思い出すたびにどうしても傷に気がいってしまう。 この傷をつけた黒装束はゾロが斬ってしまっていた。ルフィは黒装束なんて殆どみんな同じに見えたのだけど(頭領は特別大きかったから別だが)、ゾロには区別がついていたらしい。おれが仕返ししたかったのに、と言えばゾロに「悪かった」と謝られてしまって、それ以上なにも言うことができなくなった。そして、川上での戦闘を終えた尼たちが到着する。そういえば胸のムカムカは治まっている。暴れてすっきりしたのかな、とルフィは結論づけた。 「とりあえず、吉原の大火をくいとめてくれてありがとう」 ルフィがロビンに頭を下げた。 「ひとまず手を結ぶという約束でしたでしょう。こちらこそあの男を消してくださってありがとうございました。」 今度はロビンが頭を下げる。ロビンの後ろに控えていた尼たちも一斉に頭をさげた。 「あぁ、あれはゾロが」 「待て。礼を言うには早いようだ。」 ゾロが立ち上がった。庭に動くものがあったからだ。黒いまがまがしいかたちのものが、竹垣を越えて、入ってきたのだ。黒装束のすがたが、川から這い上がってきたのだった。濡れたからだを、石燈篭にもたせかけて、両手を動かしているようだったが、また足に力が入ったらしい。忍びの里の頭領、もう半分は死人のていで、ふらふらこっちへ歩いてくる。 「なんだ、この野郎」 ルフィも立ち上がって、庭におりると、頭領を押しとどめようとした。けれど黒い影は衣服から水滴をしたたらせながら、じりじりと歩み寄る。その両手は、文箱のようなものを、差し出そうとしていた。石燈篭の火袋から取り出したに違いない。と思った途端、ルフィはびくりとした。イヤな予感がして思い切り黒装束を蹴り飛ばそうとした。勢いをつけて蹴り飛ばすと同時に後ろから思い切り着物を引かれてバランスを崩す。覆い被さってくる影を感じた。これはゾロだな、と思ったときには、地をふるわすような大音響とともに、頭領のすがたが火柱と化した。火柱は高く高く立ちのぼった。座敷のうちの人々は、ただ呆然として、金の霰のようにふりそそぐ火の粉を、見つめていた。 「ゾロ?」 ようやくルフィが、自分をかばったのであろうゾロに声をかけた。体に力が入っていない風なのは気のせいだろうか。 「あの烏天狗、最初からここを吹っ飛ばす気で、地雷火を用意してきやがったんだ。」 そう言ってゾロがルフィの上から立ち上がった。ルフィはほっとして、自分もようやく腰をあげた。 「そうでしょうね。そのくらいのことはする男です」 座敷からロビンの声がした。火の粉が消えたあとに、黒いかたまりが立っていた。黒こげのかたまりになっても、頭領はまだ立っている。肉と衣服の燃える異臭が、ルフィの鼻をついた。近づいてみると、頭領の上半身はななめに裂けて、吹っ飛んでいた。ルフィが近づくと黒いかたまりは、ぐらっと揺れて、崩れるように倒れた。ルフィは顔を顰める。なんてすさまじい執念だったろう。ルフィの隣に立ったゾロが座敷を振りかえった。 「お前ら早く姿を消した方がいい。地雷火まで破裂したんじゃぁ近所が黙っちゃいねェ。春のおぼろ月夜に雷が落ちたなんて言い訳は通用しねェだろ。聞こえねェか?誰かが金きり声をあげている。ひとが様子を見に来るだろう」 「もっともです。退散しましょう」 ロビンが立ち上がると、黒衣の尼たちもいっせいに動いて庭へおりた。 「悪ィが、その辺に落ちてる奴ら、片づけてってくれると助かる」 「わかりました。ルフィ、邪魔者はこれでいなくなったわ。迷子札を持って私たちと旅立ってくれる気なら、三日後に迎えをやりますので、こちらでお待ちください。」 尼たちが、黒装束の体をかかえて竹垣を越え、舟に乗り込むのを見ながら、ロビンは言った。
「三日後か。・・・ずいぶん急だな。」 尼たちが、ものすごい早さで消えたあと、ゾロが横で呟いた。少し声が掠れているような気がしてルフィはゾロを見る。 「それにあいつらも十分うさんくさい」 「まぁ、宝見つけるまで手を組むって約束だから」 ルフィの心臓がいやに早く脈打っている。この違和感はなんだろう。 「言い訳、考えねェとな。こういう時はナミがいれば楽なんだが」 肝心な時に使えねェな、と言ったゾロの背が行灯の光に照らされて一瞬赤く見えた。ゾロの黒い着物の下の長襦袢の色かと思った。 「ゾロ?」 「悪ィな、ルフィ。言い訳はお前がなんとか考えてくれ。おれはちっと寝る」 そう言って崩れ落ちたゾロの背中は、焼けて赤黒く染まっていた。 2005.6.18up
2ヶ月ぶりの更新です。 忘れてますね。いろいろと。 そしていつもより短め。 こう、あえて、背中に傷つけてみましたよ。 ごめんねー(誰に対して謝っているのやら)。
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